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地元では一番カッコよくカットしてくれると評判だった、駅前の小さな美容室。
高校生になり、ほんの少しオシャレ心が芽生え始めた、当時の私は、ドキドキしながら最初の一歩を踏み入れた。 そして結局、10年近くの間、いつもそのお店に通い続けた。 その頃は美容師さんがまだ”大人のお兄さん”と思えた時代。 (いまや、ほぼ全員年下だけどサ、、、) 同級生の男子(ガキ)どもとは違う、オシャレで、カッコイイお兄さん達がいる店。 私は、一生懸命背伸びした身なりをし、オトナな(つもり)会話を交わして、美容室での短いひとときをエンジョイしたものである。 お店の新人に、シャンプーボーイと言われた1人の男の子がいた。 歳は私の3つ上の、ちょっとした男前のボーイで、 ”カットは一人前になってから!”と、来る日もあくる日もシャンプーばかりの 陰武者的存在。とても上手と好評を得てただけに、本当に心地よかったけど。 私が彼とお話する時間は、ほんの数分間。 しかも顔に布をかけられたままの、無気味な布越しトークのみ。 だけど私は、彼の大きな手とボソボソと話す面白トークが大好きだった。 あの頃からか、私はたとえ非現実的(=直接恋愛関係に結びつかない相手)だとしても、職人なオトコに惚れやすい女になった気がする。 なんというか、、、 ”気が合うとか”、”心から信頼できる、、”とかそういう精神的な部類の恋愛ではなく、もっと本能的に感じる種類の、、、端的に言えば、直接に性的な部分を刺激するような恋。 それは、現実的な形にならなくとも、今でも私の心に根付いている感情、 だったりするのだ。 シャンプー台からあがり、彼はすっかり”手先が器用”で評判な、指名の多い一人前の美容師さんとなった。 ”morerockちゃんの髪の癖はオレが全部知ってるから”わざわざ指名しなくとも、彼は私の専属美容師さんとなった。 たまたまB型同士、おしゃべり同士というのもあって、私達は随分仲が良かった。 盛り上がってる私達の会話を聞きつけ、いつのまにか会話に混ざってくるスタッフもいたほどだ。 私の母もまた彼の顧客の1人。 1ヶ月の間に何度も親子が交代でお店に現れるものだから、お互いの話題もつつぬけ。 ”あの娘最近彼氏できたみたい””ダイエットはじめたらしいのよ〜””母は優しく見えて、鬼婆、、、、” なんて、事細かなプライベートまで知れ渡る有り様だ。 客と言うよりは、友達のような関係が続く中で、 鏡越しに”よく目が合う”私と彼は、少しだけ、お互いを、意識し始めた。 だけど、どんなに意識したって私達はあくまで店員と客。その場限りの疑似恋愛。 お互いに店外にちゃんとしたプライベートがあるわけで。 それでも、ちょっとお店に行くのが、楽しみな私だったりした。 当時の彼の趣味はバイクだった。 お店に行くと、よくマニアックネタを聞かされたりしたものだ。 ある日いきなり誘われた。 ”今日早く終わるから、よかったら晩飯を食いに行かない?” しかし彼との関係は、あくまで”非日常的疑似恋愛” いきなりやってきた現実に私は戸惑った。 結局そのまま、彼のバイクの後ろにまたがりながらの初デート。 ”ボディータッチ”の最高峰 Na シチュエーション!イエイ!、、 だのに、、。ダメな私。 ”morerockちゃんの胸があたって嬉しいな〜”などと、これまた微妙〜な下ネタを言ってくる彼のちっちゃな冗談にすら、小粋に答えられないよな、もどかしい感じとか。 地元のファミレスに連れて行かれた時も”デートってファミレスかよ”といちいち現実的に品定めしたり、折角色々お話したくても、 ”でも彼は美容師さんだし、私はOL。あまり現実的じゃないし。母にバイク二人乗りした事を知られたら、二人して怒られそうだし、、、どうしよう。”とか、 余計な考えが頭に巡って。本能に従う事がよう、出来へん。 きっと今の私なら、心のまま素直に楽しめたのにな。 そんな余裕すらない、若い私だった。 その後、携帯の連絡先を交換しあい、なんとなく二人は連絡を取り合う仲になった。 ちょっとだけ、ただの店員と客のラインを越えちゃったかしらという気分。 当初の私は、その事が恐くて、わざと、彼と少し、距離を置いたりした。 (実際、彼がいたりいなかったり色んな状況があったので、安易には飛びつけかったのかもね) それでも、相変わらずお店に行くと鏡越しに目を合わせてはドキドキ楽しくて、店内疑似恋愛は続き。 だが帰宅後、電話が鳴ったりすると、わざと留守のふりをしてしまうような、 思わせぶりな私だった。 ある日。いつもの様にカットを終えると、もうすっかり遅い時間で、私が最後の客となった。 ”また、御飯に行こうよ”という話が出たけど、わざと断ったのか、本当に用事があったのか、お誘い自体が当日の話じゃなかったのか、細かい事は憶えてないけれど、結局食事には行かず、ちょっとだけ後ろ髪を引かれながら帰宅した事だけを憶えている。 帰宅後に突然鳴ったのは、彼からではなく、他のスタッフからの電話。 ”彼が、バイクで事故にあった。御迷惑をかけますが、 当分職場復帰の見通しがつきません” 私のカットを終えて、帰る途中の出来事だったとの事。 命に別状はなかったものの、全治1年のひどい状況。一時は生死をさまよう状態 だったとか。 心配でならなかったけれど、結局お見舞いには行かなかった。 さんざん迷ったが、”行くなら一緒に行こう”と言ってくれる母の手前、なんとなく気まずい気がしたのもある。 そんな事を言っている場合じゃないのに”ただの客がお見舞いなんて、やり過ぎ?”と、無理矢理理由をつけて、もたもたしてたら いつのまにか時が経ち、、、、億劫になっていったのだった。 季節が過ぎ、現実問題彼の復帰を待って願掛け一丁!と、髪の毛をボサボサにしておくわけにもいかないので、私は会社でよく会うイケテる髪型の女の子に声をかけ、イケてる美容室を紹介してもらったのだった。 そこは原宿のまん中にある、極めて都会的な美容室で、思い通りの髪型にしてくれる刺激的で快適なお店だった。美容師さん達もモデルのように素敵。 私はすっかり、地元の小さな美容室と、そして彼の事を忘れた。 その後、彼は1年後に見事復帰した。 我が母は、再び彼の顧客として戻った。 ”morerockも行ったら?彼、前より腕前もあがって熱心なのよ〜”と母は言うけれど でも私は私で、もう、通り過ぎちゃった事だもの、、、。 やがて、彼の情報は、いつも母から聞くようになった。 お店の店長になった事、将来は独立する事、結婚した事、子供が産まれた事。 そして、今でも私の事をちょっと好きでいてくれる事、、、。 母は言う。 ”あの頃、美容師とOLなんてつり合わないし、絶対に仲良くなられちゃ困る、、、と思ってたけど、彼は私にとっても特別。可愛い息子みたいな存在だわ。 貴女の事を気に入ってたみたいだから、貴女が結婚してもよかったかもね。 たまには、会いに行ってあげたら喜ぶわよ” 仕方ない。恋心を抱いていたけれど、縁がなかったんだもん。 お見舞いにすら行かずに、美容室にも戻らずに、結局裏切っちゃったんだもん。 これが、私の出した答えなのですよ。 だから彼は、御家族やお子さんとどうぞ末永くお幸せにね。ってそれしかないじゃない、、、、? なんだか切ないけれど。 そして最近、また母が店に行った時の事。 近ごろ話題の”災害”の話になったらしい。 ”娘は都内に出勤してるから、地震でも起こったら帰宅難民になるかもしれない” と母、 その時彼が真顔でこう言ったそうだ。 ”僕は、もし地震でmorerockちゃんが帰宅難民になったら、どこまででも探しに行くよ。川が氾濫したら、泳いで助けにいくよ。 僕にとって、morerockちゃんはずっと好きで、ずっと可愛い存在なんだ” 涙が出るほど嬉しい気持ちになった。 これが営業トークである事、彼の一番大切な存在は他ならぬ家族である事、日常生活では私の事、思い出しもしないだろう事。。。すべてわかっている。 だけど、会わなくなってもう数年経った今でも、私の事を ”ちょっとだけ、ずっと、好きでいてくれる”彼が、素直に嬉しかった。 すぐにでも彼に会って”ありがとう”と”ごめんね”を伝えたいし、実際気軽に行ける距離に彼はいるのだが、なんとなく、今の距離が壊れそうで、二の足を踏む。 彼の中では、まだ私は高校生〜20代前半までの可愛い存在のままなのだ。 ここで会いに行って、たとえば恋に落ちてしまったら、リアルな罪悪感に苛まれるし、 だけど、何も起こらなければ、”歳取った私を見て、興醒めしちゃったのかな” なんて、なんだか物足りないような気もするだろうし。 お互いの大切な人達を傷つけない為に、 何も起こさないのは当然で、自然で、一番なのだけれど、、、。 なんだかんだ理由をつけては、結局都内のオシャレ美容室に通い、彼に会いにいくのを後回しにしている。 一体いつになったら、私のXデーはやってくるのだろうか、、、。 結局私は、ずっとこのままでいてほしいのかもな。
by morerock
| 2005-11-25 00:52
| 或る男と女の話
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